2013年10月16日水曜日

アメリカン・ポップ・アート展

ゴッホやスーラの「印象派を超えて」展を見に行ったのに、ふらりと入った「アメリカン・ポップ・アート展」。いま、国立新美術館で開催中のこの二つの美術展は、まったく違うベクトルのように見えて、二つ併せて鑑賞すれば、19世紀から20世紀の西洋美術の潮流を体感することができます。


アンディ・ウォーホル『キミコ・パワーズ』(1972年)




この「アメリカン・ポップ・アート展」はアメリカの実業家ジョン・パワーズ氏と日本人の妻、キミコ夫人の個人コレクションによるものです。夫妻は1960年代からポップ・アートのコレクターおよびパトロンとして、作家たちと様々な交流がありました。

ポップ・アートとはPopular Art(=大衆芸術)の略。1950年代半ばにイギリスで起こり、1960年代〜70年代にかけてアメリカで大流行しました。アーティストとして、まず筆頭に挙がるのが、アンディ・ウォーホル。彼のもっとも有名な作品も見ることが出来ます。


アンディ・ウォーホル『毛沢東』(1972年)




著名人をモチーフにした一連の作品が有名ですが、一般人(といっても、実業家などのいわゆるセレブリティ)をモデルにした作品も数多くあります。これはウォーホルに莫大な収入をもたらしました。

確かに、たとえ顔を紫に塗られたとしてもウォーホルにだったら作品にしてもらいたいものです。


ジャスパー・ジョーンズ『0−9の重複』(1960年)



ジャスパー・ジョーンズは「星条旗」や「標的(こう言っては何ですが、鳩よけのバルーンみたいな模様のやつで、皆さんもどこかで見たことがあるはず)」「数字」をモチーフにした作品で一躍注目を浴びました。これは極めてアナログな表現ですが、めまぐるしくカウントされていくデジタル的感覚を想起させる興味深い作品です。


ロイ・リキテンスタイン『鏡の中の少女』(1964年)



ニューヨークに生まれ、ニューヨークで没した、生粋のニューヨーカー、リキテンスタイン。アンディ・ウォーホルと並ぶ、ポップアート界のスター作家です。黒く太い輪郭線と、ベンデイ・ドットとよばれる網点が特徴。

一見、ただひたすらモダンな表現を追求した作品ばかりのように見えますが、古典的な絵画の伝統を時折チラつかせるのが、リキテンスタインの憎いところ。

鏡は「ヴァニタス(虚栄)」の象徴として古くから西洋絵画に取り入れられたモチーフです。少女は虚栄の寓意像であり、時代を超えて、人間の普遍的な愚かさを象徴しているようにも見えます。


トム・ウェッセルマン『マリリンの口の習作(口#14)』(1967年)



唇ばかり描いているトム・ウェッセルマンの作品。どうやらマリリン・モンローの唇をイメージしているらしいが、そう言われればそう見えるし、そう言われなければそうは見えないかも…。


トム・ウェッセルマン『グレート・アメリカン・ヌード #50』(1963年)



同じく、トム・ウェッセルマンの作品。西洋絵画の伝統的なヌードを主題としつつ、アメリカの大量消費社会を表現した連作のうちのひとつ。背景にはルノワール、ルドン、セザンヌの作品が引用されています。(このルノワールの作品は、ついこの間まで日本に来ていました。)背景のラジオは実物がコラージュされており、実際に作動したものだそうです。

ここまでいくつか作品を見てきましたが、ポップ・アートを生み出した時代とは、どのような時代だったのか、なんとなくイメージができたでしょうか。

最後に、再びアンディ・ウォーホルの作品に戻りましょう。


アンディ・ウォーホル『キャンベル・スープ Ⅰ 』(1968年)




アンディ・ウォーホル『200個のキャンベル・スープ缶』(1962年)



アンディ・ウォーホルといえば、このキャンベル・スープ缶を連想する人も多いはず。

今回は日本初公開となる『200個のキャンベル・スープ缶』を見ることが出来ます。

おびただしく並べられたスープ缶は、戦後、アメリカから世界中に広まった大量消費社会を象徴しています。画一的に工業製品が大量に製造され、大量に消費される。商品はもはやただの記号に過ぎない。そんなメッセージすら感じます。

しかしウォーホルは、それを肯定するでもなく否定するでもなく、ただ淡々と時代を受け止め、表現しているように思えます。

全く同じに見えるこの二つの作品ですが、下の『200個のキャンベル・スープ缶』が先にステンシル(型紙を作り、上から絵の具を塗る方法)によって制作され、上の『キャンベル・スープ Ⅰ 』は数年後にシルクスクリーン(ステンシルよりも精度が高く複製できる)によって制作されました。

『キャンベル・スープ Ⅰ 』は10枚一組の作品ですが、いずれも滑らかな仕上がりで、ほとんど違いがわかりません。それに対して『200個のキャンベル・スープ缶』はよ〜く見ると、ひとつひとつ違っているので、会場でぜひ確かめてみてください。

文字通り、「判で押したような」この制作過程そのものが、まさに大量生産の時代を象徴しているとも言えるでしょう。


アンディ・ウォーホル『マリリン』(1967年)





最も有名なこの作品は、マリリン・モンローの死後に制作されたものです。一つのポートレイトが様々な表情に脚色され、複製され、増殖していく。大量消費の時代に、マリリン・モンローという一人の女優もまたメディアによって大量に複製され、消費されていく存在であったことを物語っています。




マリリン・グッズを大人買い!


ブロック・メモはちょっと高い(2000円位)けど、
あまりのかわいさに思わず買ってしまった。
でも10年くらい使えそうだから、まあいいか。



スープ缶と記念撮影もできますよ。





アメリカン・ポップ・アート展

       2013年8月7日(金)−10月21日(月) 国立新美術館(東京)
      



会期終了間近!週末は新美へ。




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